監督:アレクサンダー・ペイン出演:ジョージ・クルーニー、 シャイリーン・ウッドリー、アマラ・ミラー、 ニック・クラウス、ボー・ブリッジス、 ロバート・フォスター、ジュディ・グリア マシュー・リラード 他 オアフ島で暮らすマット(ジョージ・クルーニー)は、 妻と2人の娘とともに暮らしていた。ところがある日、 妻がボートの事故に遭い、そのまま昏睡状態に なってしまう。それをきっかけに、妻が彼と離婚する つもりだったことや、そのことを長女(シャイリーン・ ウッドリー)だけでなく友人たちも知っていたことが 判明してマットはショックを受ける..... 冒頭、ハワイは楽園ではなく、暮らしていくのは大変だという内容のモノローグがある。 「サーフィンなんてもう15年もしていない」という言葉にそんなものかもしれないなぁと思った。 ボートの事故で昏睡状態になった妻を前にして、夫マットは仕事で多忙だったために、 妻と向き合わなかったことを悔やむ。妻の入院中、マットは娘たちに対して父親として うまく振る舞おうと奮闘するが、10歳のスコッティと全寮制の高校から呼び戻した 17歳のアレクサンドラの父親への視線は冷たい。育児は妻に任せきりだった。 妻が不貞をしていたことを知ったマットは、相手を問いただしに向かう..... 一方、主人公マットはハワイ王族の直系子孫で広大な原野の相続権を持ち、 土地を売って一族が利益を得るか、権利を保有するか(ただし7年後に権利が切れる)の 決断を下さなければならない。 ジョージ・クルーニーがダメ夫、ダメ親父を演じる。いつもの二枚目の役とは違う。 妻の父(ロバート・フォスター)やマットの従兄弟、浮気相手の夫婦など、脇役に味があった。 長女アレクサンドラ役のシャイリーン・ウッドリーは目力のある美少女。 アレクサンドラのボーイフレンドであるシド(ニック・クラウス)は最初はチャラく見えていたが、 辛い経験をしていたことがわかり、後に気配りを見せる。注目のキャラだった。 マットが先祖から受け継いだ土地の扱いを考え直すのは、 家庭の危機に直面して苦悩し、妻や子どもに思いを巡らす際に、 先祖から子孫への繋がりや子どもたちに豊かな自然を残すことを考えたためだろう..... 深刻な内容であるが軽やかで、ハワイの自然の美しさが辛さを和らげてくれる。 人生のほろ苦さを描きながら優しい。いい映画だと思います。 余談:長女を迎えに行ったハワイ島の道路の脇には溶岩が固まっていた。 ハワイ島は巨大で、溶岩が広範囲に広がっていたのを思い出した。 父親が大きな網でプールの落ち葉をすくうのは、昔カリフォルニアでお世話になった 家庭のhost fatherがよくやっていた。自家用プールはメンテナンスが大変。 マットが乗っていたのはホンダの車。財産はあるのに贅沢はしない堅実な生活ぶりを 表しているように思いました。 監督:アスガー・ファルハディ出演:レイラ・ハタミ、ペイマン・モアディ、 シャハブ・ホセイニ、サレー・バヤト、 サリナ・ファルハディ、ババク・カリミ、 メリッラ・ザレイ 他 イランのテヘランで暮らすシミン(レイラ・ハタミ)と ナデル(ペイマン・モアディ)の夫婦には11歳になる 娘デルメー(サリナ・ファルハディ)がいた。妻シミンは 娘の教育のために外国へ移住するつもりだったが、 夫ナデルは介護の必要な父を残しては行けないと 主張してきかない。シミンは実家に戻ってしまい、 ナデルは家の掃除と父の介護のためにラジエー (サレー・バヤト)という女性を雇う..... シミンとナデルは離婚の危機を迎えた夫婦。 妻シミンは娘の将来を考えて国外移住の許可を得るために1年半奔走したが、 ナデルの父がアルツハイマー病になったことで計画が狂ってしまう。 ある日ナデルが帰宅すると、父はベッドから落ちて意識不明の状態で床に伏せていた。 ナデルは怒りを露わにして、介護を頼んだラジエーを手荒く追い出す。 その夜にナデルはラジエーが入院したとの知らせを受ける..... この映画の特徴は、出来事の肝心の部分を映さないこと。 ナデルの父親が交通量の多い道を彷徨する。彼を追いかけるラジエーはどうなったのか? ナデルはラジエーを家から追い出すが、どれほど強く突き飛ばしたのかはわからない。 問題はナデルがラジエーの妊娠を知っていて突き飛ばしたのかということになる。 イスラム教の考え方や女性の地位が低いのはイラン社会の特質だろう。 簡易裁判には弁護人がいなくて、それぞれが勝手に自己主張するのには驚いた。 一方で映画の焦点となる問題はどこでも起きうる普遍的なことでもあるような気がした。 妻の言い分と夫の言い分のどちらにも理はあるが、それに翻弄される子どもが不憫。 また、11歳の子どもに重大な決断を強いるのは酷のように思った。 脚本が見事で演出や演技も巧み。秀作だと思います。それぞれの主張、小さな嘘、 保身など、様々な要因が絡み合った複雑な展開をミステリータッチでぐいぐい見せる。 ただ、見ていてちょっとイライラした。歯がゆいというか..... ボタンの掛け違いのような 不幸が重なっていくが、結局2組の夫婦内での会話不足が事態を悪化させたのでは? 頑固なナデルが折れれば(柔軟性があれば)事態は変わったかもしれない..... 観客の想像力に委ねる作りで察しがつかないわけではないが、若干のもどかしさがあった。 監督:アキ・カウリスマキ出演:アンドレ・ウィルム、カティ・オウティネン、 ジャン=ピエール・ダルッサン、ブロンダン・ミゲル、 エリナ・サロ、イヴリーヌ・ディディ、 クォック=デュン・グエン、フランソワ・モニエ、 ジャン=ピエール・レオ 他 北フランスの港町ル・アーヴル。マルセル(アンドレ・ウィルム)はかつてはパリでボヘミアン生活を送っていたが、現在では駅前で靴みがきをして生計を立てている。家には妻アルレッティ(カティ・オウティネン)と愛犬ライカが帰りを待っていてくれる。ある日、港にアフリカから不法移民が乗ったコンテナ船が漂着する。警察の検挙をすり抜けた少年イドリッサ(フロンダン・ミゲル)は、港でマルクスと偶然に出会う..... 映画館(ミニシアター)は満員で補助席が出る大盛況でした。 フランスの難民問題を扱った映画と言えば、『君を想って海をゆく』を思い出す。 胸が痛くなるような映画で、本作もあんなふうだったら哀しいなぁと思っていたところ、 全く違っていて、こちらはお伽噺のような風合いでした。 主人公マルセルは、アフリカから来た少年イドリッサを彼の母親がいるロンドンに送り出す ために、費用を工面しようと奮闘する。時を同じくして、マルセルの妻アルレッティは体の 不調を訴えて入院する。不治の病を宣告されるが、アルレッティは夫にそのことを伝えない。 近所の人たちは、マルセルが少年を匿うことや出国の資金を集めに協力する。彼らは マルセルが知らない妻アルレッティの病状を知っていて彼女を見舞う。善意の人ばかりだ。 不法移民を取り締まる警察側ではモネ警視(ジャン=ピエール・ダルッサン)が面白い。 モネ警視は警官の中でも上級のようで、立派な服装をして年代を指定してワインを飲む。 安酒ばかり飲んで一張羅の背広を着てもピシッとしないマルセルとは対照的。物語は 庶民の生活を描いた人情もののような感じ。最後に映る花も日本風(日本へのエール?)。 主人公マルセル(アンドレ・ウィルム)のセリフや動きにユーモアがある。愛犬ライカも好演。 マルセルは子どものようだと全てが分かっている妻アルレッティ(カティ・オウティネン)が、 少年イドリッサが病室に現れたとき、すんなり彼を受け入れるのは印象深いシーンだった。 映像の色彩はくすんだパステルカラーで統一され、心地よくて暖かい。 淡々と進行するが、飽きさせない。老いたロックンローラーの歌もよかった。 ラストはもっていき方が強引で驚いたが、並行する2つのエピソードにおいて、 片方での善行によって、もう一方に奇蹟がもたらされたように思いました。 補足:『大人は判ってくれない』の主人公ドワネルを演じたジャン=ピエール・レオが 密告者役で出演している(予告編では1:35~に登場)。 監督:ピーター・チャン出演:ドニー・イェン、金城武、タン・ウェイ、 ジミー・ウォング、クララ・ウェイ 他 1917年、雲南省ののどかな村で、両替商に押し入った強盗2人が、その場に居合わせた紙すき職人リウ(ドニー・イェン)に抵抗された末に命を落とす事件が起きる。村を訪れた捜査官シュウ(金城武)は、ただの職人がなぜ武術の心得がある強盗たちに対抗できたのかと疑念を抱き、職人の正体を探ろうとする..... 強盗は、1人は武術の心得えがあり、もう1人は刃物を持っていた。偶然その場に居合わせた紙すき職人を追いまわしているうちに、強盗2人が互いに仲間を傷つけて自滅したように見えた。 捜査官シュウが現場検証や検死を始める。武術や医学の知識を元にした科学的な捜査。 体内を映す映像があったり、捜査の過程が面白い。 強盗と紙すき職人の攻防では、何が起きていたのか?それを解明する映像がまた面白い。 後半は、カンフー・アクションが炸裂する。 強烈な悪役が登場する。マスターのジミー・ウォングが恐ろしく、強い。 マスターの妻クララ・ウェイもアクションを披露する。美しい悪女だった。 リウ役のドニー・イェンの佇まいが渋くて、ただならぬ気配があってゾクゾクした! アクションが凄い。リウは妻と息子2人と静かな生活を送っているが、 実の父親とは激しい確執があって親子関係は複雑。ファザコンでもあるようだ。 捜査官シュウ(金城武)は頭脳明晰。悪人を信じて失敗したことがあり、そういう甘さを 戒めようとしている。仕事熱心だが、ちょっと癖のある人。リウの家で食事をしたとき、 勧められてもいないのに勝手に泊るw 彼の最後の行動は意味深い。 リウの妻アユー役のタン・ウェイが地味ななりをしていても、とても魅力的だった。 村の自然が美しく、緑や川を映し出す映像が非常に綺麗。 捜査官は犯罪を暴く。それは正義。過去には残虐な行為を繰り返したが、暴力は封印して 静かな生活を送ろうとしている人が他者の犯罪に巻き込まれて武術を使う。彼の過去が 捜査官によって明らかにされたことで抗争が起きる。もし、捜査官が現れなかったら、 新たな犠牲者や被害が出ることはなかったかもしれない。正義の難しさも感じさせる。 ミステリーとアクションが融合し、登場人物の造形が深く、とても面白かったです!
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